「共倒れになりそうで不安だ……」
「老老介護を解決していくには?」
このように、老老介護の問題について切実に悩みを持っているのではないでしょうか。
「老老介護」とは、高齢者が高齢の家族を介護することを意味し、身体的負担や虐待のおそれ、共倒れが主な原因として挙げられます。
問題の解決には、ストレス解消や介護保険サービスの利用、家族や近隣の協力要請が不可欠です。
そこで当記事では、
- 老老介護の問題
- 老老介護の問題
- 老老介護の解決策
に注目して、問題から解決策までわかりやすく解説していきます。
目次
老老介護の問題とは?
老老介護には大きく分けて3つの問題があります。
- 身体的な負担
- 虐待
- 共倒れ
一つ一つを解説していきます。
身体的な負担
介護者側が高齢であるほど体力が衰え、身体的な負担が大きい傾向です。研究からもその実態が明らかになっています。
また、高齢の介護者側が病気を抱えている場合もあり、介護サービスを利用している間に通院する時間に使う方もいます。
参考:老老介護の実態と課題:在宅認知症高齢者と介護する配偶者の経験から地域支援を考える|KAKEN、老老介護を行っている主介護者の生活満足度に影響する要因|J-STAGE、主介護者の介護負担感に対して訪問および 通所リハビリテーションを併用した事例考察|J-STAGE、老老介護・認認介護とは|健康長寿ネット
虐待につながる恐れ
高齢の介護者が虐待につながる恐れもあります。
介護者側が認知症やパーキンソン病などの病気や障害に関する知識がないと、虐待につながってしまうことがあります。
また介護疲れ、介護者側の病気や障害、性格も虐待につながる恐れがあります。
そのほかに家族や周囲の介護に対する無関心、希薄な人間関係や社会からの孤立も引き金となる恐れがあります。
介護サービスが利用できる環境にあったとしても、介護を受ける方にあったサービスでないことも虐待の原因となることがあります。
参考:高齢者虐待の背景|東京福祉局、高齢者虐待防止の基本|厚生労働省
共倒れ
老老介護による共倒れの危険性があります。
なぜならば、介護する側も要介護者になる可能性もあるため、そのまま長く介護を続ければ夫婦生活が破綻してしまう恐れがあるためです。
法政大学の『介護保険制度における「介護の社会化」と家族介護』という論文によると、介護保険制度は「介護の社会化」と言われています。
「介護の社会化」は、これまで家族内などで行っていた介護を社会全体で支援することとされています。
その介護保険制度があるにも関わらず、老老介護による共倒れが起こっているのは、その制度が高齢者夫婦の介護の状況と合っていないからなどと論じています。
参考:家族介護者支援マニュアル|厚生労働省、介護度の高い脳卒中長期在宅療養者を支える高齢家族介護者の介護継続に関する要因|J-STAGE、要介護高齢者夫婦と介護保険制度 : 共同生活維持のための生活支援に関する考察|広島大学学術情報リポジトリ、介護保険制度における 「介護の社会化」と家族介護|法政大学 大原社会問題研究雑誌
老老介護が増加している原因
かつては高齢になると、子世代の家族が介護などの役割を担っていましたが、現在は家族機能が衰退して希薄になってきています。
子どもとの同居は減少し、高齢者夫婦のみの世帯が増えており、高齢者が介護を担うしかない状況となっているのです。
その理由の一つとして、大半の高齢者が子どもとの同居を望まないという意見があります。
認知症の人は、大半が在宅で生活をしている状態で、多くの高齢者夫婦が介護の役割を担っています。
昔のように家で介護をするということが難しくなってきているのです。
参考:健康・福祉(令和6年版高齢社会白書・全体版)|内閣府、老老介護を行っている主介護者の生活満足度に影響する要因|J-STAGE、家族介護者支援マニュアル|厚生労働省
老老介護の3つの解決策
「それならどのように老老介護の問題を解決していけばいいの?」
ここが皆さまが求めている答えではないでしょうか。
老老介護の問題に対して少しでも負担を減らすために、3つの解決策を紹介していきます。
・ストレス解消
・介護保険サービスの利用
・家族や近隣の協力要請
それぞれ順に詳しく解説していきます。
ストレス解消
老老介護は、見返りが少なく長期にわたるため、適切にストレスを解消していくことが介護をしていく上で大事です。
人は高齢になるほど社会との関わりが少なくなり、うつになる可能性があります。さらに老老介護をしているとその傾向は高くなります。
介護から距離を置くことによってストレスが減ったという研究結果があります。
介護から離れるのは、時によって思い切りが重要かもしれません。
しかし、これまで十分にできなかった趣味などで気分転換をする機会をつくることで、介護のストレス発散につながります。
参考:老老介護を行っている主介護者の生活満足度に影響する要因|J-STAGE、在宅療養高齢者と家族介護者の家族機能の特徴とQOLの関係|目白大学健康科学研究第13号
介護保険での適切なサービスの利用
高齢者が利用できるサービスとして、介護保険サービスがあります。
利用には一定の基準や審査がありますが、介護サービスの利用により介護者側の負担が減る可能性があります。
多くのサービスがありますが、一例として以下の介護保険サービスを紹介します。
| 訪問介護 | ホームヘルパーが居宅に訪問し、入浴、食事などの介護や調理、選択掃除などの身の回りの家事を行うサービス |
| デイサービス | 施設に通うサービスで、入浴、食事といった日常生活支援や生活機能訓練などを日帰りで行うサービス |
| 特別養護老人ホーム | 寝たきりなどで介護が常に必要な方のための入所型サービス |
| 老人保健福祉施設 | 在宅での生活を目指し、リハビリテーションをメインとした施設サービス |
| 小規模多機能型介護 | 通いを中心に、訪問や宿泊の3つを組み合わせたサービス |
| 介護医療院 | 管理や看護、医学的な管理が必要となる方を対象とし、介護や医療などを提供するサービス |
| グループホーム | 介護予防を目的とした、介護や機能訓練などを提供する共同生活型のサービス |
団塊世代が75歳以上になる2025年には、医療や介護がこれまで以上に必須となってきます。
そのため国内では「地域包括ケアシステム」と呼ばれる、住み慣れた地域で住まいや医療、介護、予防、生活支援といった複数のサービスが一体的に受けられる仕組みが計画されています。
適切な介護保険サービスを利用することにより、老老介護の問題が解決できる可能性があります。
参考:地域包括ケアシステム|厚生労働省、家族介護者支援マニュアル|厚生労働省、老老介護を行っている主介護者の生活満足度に影響する要因、介護医療院について|厚生労働省、
介護保険制度の概要 |厚生労働省、サービス一覧/サービス紹介 高齢・介護|WAM NET、
公表されている介護サービスについて|厚生労働省、助け合いにより安心できる高齢者介護の実現に向けて|香川大学経済学部
家族や近隣の協力要請
以前家族が家で介護をしていた時のように、同居していなかったとしても子ども夫婦などの家族からのサポートが必要です。
サポートの方法は家族構成によってそれぞれですが、大きく以下の2つの方法に分かれます。
・家事や介護などのサポート
・相談にのるなど心に関するサポート
もし高齢者夫婦のみで他に家族がいないのならば、介護をしている配偶者が重要となります。
しかし高齢者夫婦のみでの生活はお互いの変化に気づかない可能性があるため、高齢者夫婦に声をかけるなど近隣などによる協力が必要です。
助け合いにより安心できる高齢者介護の実現に向けて|香川大学経済学部
老老介護が大きな問題になる前にできることから始めよう
老老介護で、高齢にともなう身体的負担や共倒れが起こる可能性があります。
また病気や障害に関する正しい知識がなく、介護疲れや人間関係の希薄などにより虐待となれば深刻な問題でしょう。
解決策として、ストレス解消や介護サービス利用の検討、家族や近隣の協力要請が必要です。
老老介護が大きな問題になる前に、ご家庭で出来る解決策を検討していきましょう。